<国際派時事コラム>縄張りを拡げすぎる環境省
<国際派時事コラム>縄張りを拡げすぎる環境省
↑ この広告は配信会社「まぐまぐ」が入れているものです ↓ 週3回更新のブログはこちら http://plaza.rakuten.co.jp/yizumi ◆■■■国際派時事コラム「商社マンに技あり!」■■■◆ http://www.f5.dion.ne.jp/~t-izumi/ 縄張りを拡げすぎる環境省 ■■■■第356号■■平成25年3月21日発行■■■◆ 近ごろの環境省は妙に調子に乗って、ほんらいの領分外の ところまで縄張りを拡げすぎている。 石炭火力発電所の建設や原子力再稼働の問題で、つくづく 感じる。 それを言うとしっぺ返しが恐ろしいから、実業界の面々は 口をつぐんでいる。 3・11の後遺症で経産省も文科省も下を向いている。 統治機構のバランスがおかしい。 ■ 環境省が反対すると石炭が燃やせない ■ 東京電力が予定している、新しい火力発電所の入札がある。 燃料コストを考えれば石炭火力にしたいところだが、環境 省はそもそも「石炭を燃やす」ことに頑固なまでに反対した。 石炭は天然ガスなどに比べて、単位あたりのCO2排出量が 多いからという理由で。 煤塵や窒素酸化物の規制をいくらクリアしても、とにかく 石炭を燃やすというだけでバツ。 世界最高の技術を結集した石炭火力発電プラントも、日本 での新設はまかりならんと環境省はゴネる。 「本件の癌は、環境省のナントカさんとカントカさんだ」 と、関係者には名前まで知れているに違いない。 本人たちは奥の院に引っ込んでオモテに出てこない。 オモテに出てこない人たちが執念をかけてゴネただけで、 成文化された環境規制にすべて合格の石炭火力発電所も建設 できない。 日本で石炭火力が建設できないと、それだけ電気代が高く なる。国民経済にとってはマイナスだ。 ここまで大きな権限を、我々国民はいつ環境省の官僚に与 えたのだろうか。 ■ 環境省と経産省の確執 ■ 環境省の縄張りはほんらい、発電所や工場の敷地の外だろ う。 敷地の外に出てくる排気・排水・廃棄物が基準内に収まっ ていれば良しとするのが環境省の領分だ。 敷地のなかで、合理的な範囲で最高技術を使うよう指導す るのが経産省。 国民経済全体を考えてエネルギー政策を策定するのも、 経産省のはずだ。 この経産省の領分に、環境省が上がり込んで確執を深める ものだから、まことに迷惑なのである。 3月17日の日本経済新聞が1面トップで報じたところでは、 ようやく環境省も振り上げたこぶしの下ろしどころを探そう としているらしい。 見出しにいわく ≪発電、石炭火力を推進 燃料費抑制 環境相も合意へ 新増設へCO2新基準≫ とある。 なにせ、環境省さまがお決めになるわけだ。 行政の範疇なので、各政党も動かない。 今や環境省は経産省よりも怖い役所に成り上がっている。 ■ 専門知見に乏しい環境省が原子力規制委員会を所轄 ■ 「怖い」の極め付けが原子力規制委員会。 原子力発電所の再稼働も廃炉も、この委員会の「サジ加減 ひとつ」というのが平成25年の風である。 今や国民経済へのインパクトは兆円レベルだ。 てっきり内閣府か総務省(消防防災の所轄官庁)に属して いるのだと思っていたら、さにあらず。 原子力規制委員会は、環境省に属している。 原子力設備の専門的知見は経産省の領分だし、科学技術全 般は文科省の領分だ。 しかし今や、それらの官庁を差し置いて、やおら環境省が、 原子力プラントの技術仕様や活断層について語るわけである。 統治機構のあり方として、ムリがある。 ムリがあるから、のろい。原発の新たな安全基準の策定も 遅々としたものだ。 ■ 津波と活断層、どちらが深刻で緊急か ■ 南海トラフの巨大地震は頻度が「百年」単位である。 おもに津波の被害によって避難者は950万人に達し、死者 は最悪で30万人以上と推定されている。 想定される津波が高すぎて、とても堤防では防ぎきれない し、都市の高台移転も不可能だ。 だから、本来なら血相変えて小型の避難艇(箱舟)を大量 生産し、街の駐車場ごとに1隻ずつ常備すべきところである。 カネがいくらあっても足りない。 その一方で、原発用地の下を通る活断層が再び大きくズレ る頻度は「1万年」単位である。 そして、福島原発や女川原発も、大地震の揺れそのものに は強靭であった。 活断層という“前科者”が再びズレを起こす確率は、万年 単位で考えて相対的には高いと推定されている。 しかし、かりに断層の“前科”がない場所で同様のズレが 起きても対処できるように対策を立てるのが、これからの原 子力プラントの基本でなければならない。 原子炉直下の活断層認定でシロとクロの議論をするのは、 じつは事の本質から外れている。 事の本質から外れた議論をした挙句に、まだ運転できる原 発を廃炉にするのは、じつは本末顛倒なのである。 ■ 原子力規制委は内閣府か総務省の管轄下に移せ ■ 環境省は今や絶大なサジ加減の権限を有するに至った。 今年7月に導入される新たな安全基準を、現在運転中の 大飯(おおい)原発3・4号機には今年9月まで適用しない ことを決めた。 この決定じたいは妥当なものだ。感謝に値する。 恐ろしいのは、そういう極めて政策的、政治的、恣意的、 経済的、総合的観点の決定プロセスに国会も総理大臣も経産 省も文科省も関わることができず、環境省の専権事項になっ ているということだ。 死者が出る規模と確率を右目で見、経済効果や経済的得失 を左目で見ながら、総合的な判断を下すべき問題なのに、今 や全てが環境省の手のひらの上。 国家統治のありかたとして、異常だ。 民主党が残したこの異常が正され、エネルギー政策や機器 設備の技術問題を再び経産省が所轄し、科学技術全般を再び 文科省が所轄するとき、はじめて3・11は収束に近づいたと 言えるのである。 緊急避難的には、原子力規制委員会は内閣府か総務省(消 防防災を所轄)の傘の下に移すべきではないか。 いまの環境省の姿勢には、なにかと経産省へのツラ当ての ような確執が感じられる。 ほとんどサボタージュと言ってもよいほどに。 === ▲ 後記 ▼ 最近読んだ小説。 原田ひ香(はらだ・ひか)著『母親ウエスタン』がよかっ た。映画にするなら、主演は広末涼子さんかな。 こちらに紹介を書きました↓ http://plaza.rakuten.co.jp/yizumi/diary/201303200000/ いま読んでいるのは、フランスでベストセラーになった ラブコメディーの『ワニの黄色い目』(早川書房)。 * * 最近のブログ記事から ―― 「エコエンジン」技術の実用化まで20年、という JAXA の悠 長さ。さすがは お役所 http://plaza.rakuten.co.jp/yizumi/diary/201303130000/ JAXA(宇宙航空研究開発機構)が、NOx(窒素酸化物)の 排出を現在より8割減らせるという画期的な基盤技術を開発 した。 今後は三菱重工など国内メーカーとも協力して研究を進め、 実用化にこぎつけたいということなのだが、信じられない悠 長さにたまげた。 ≪排出規制強化の流れを先取りし、20年後をめどに「エコ エンジン」として実用化を目指す≫ とある。 日経の3月12日17面の報道だ。 本気で実用化したいなら、最初に掲げる錦の御旗はまずは 「5年後」ではないのか。 「20年後」と言われた途端、ほとんどの関係者は 「そのころ自分はこの世にいない、この会社にいない、 この部署にいない」 と考える。 「20年後」という数字は、技術研究にかかる人工(にんく)、 つまり「人数×日数」を毎年得られるであろう予算(=毎年 の研究者人数)で割って出したものだろう。 担当研究者の発想としては、 「あぁ、これでわたくしも20年間ほそぼそと、仕事が確保で きた」 ということなのだろうか。 技術の実用化よりも、研究者の雇用確保のほうが前面に出 ている感じだ。 ほんとうに良い技術なら、人とカネを集中させて短期決戦 すべきなのだが、エンジンの改良に20年かけるという発想に 強烈な違和感を感じた。 GE のスピード感と JAXA のスピード感のちがいがそのまま、 民と官の落差、米国と日本の落差を象徴しているのではない か。 <全文はブログでどうぞ> == <泉 幸男 著> 『中国人に会う前に読もう 第一線商社マンの目』 『日本の本領(そこぢから) 国際派商社マンの辛口メモ』 通 信 販 売 も 受 付 中 http://homepage2.nifty.com/sai/mart/ == ■主宰 泉 幸男(いずみ・ゆきお Izumi Yukio) http://www.f5.dion.ne.jp/~t-izumi/ (旗艦ウェブサイト。これまでの号もここで見られます) http://plaza.rakuten.co.jp/yizumi/ (週に3回ほど更新しているブログ) ■発行者への通信は t-izumi@f5.dion.ne.jp いただいたメールは、引用することがあります。 引用内容が政治性を強く帯びたものについては、掲載につ いて ご本人の事前了解をいただくつもりですが、 この辺の 采配は発行者にお任せいただくしかありません。 発信者氏名は原則として公開しません。公開する際は、ご 本人の事前了解をいただきます。 掲載するメールは、発信者の居住地名(市ないし県名)を できるだけ書かせていただきたく、それについてお問合せを することがあります。 ■このメールマガジンの転送・転載はご自由にどうぞ。 ■このメールマガジンの内容は、主宰の勤務先の見解とは無 関係です。このメールマガジンは、主宰の勤務先による監修 その他のサポートを一切受けておりません。主宰の勤務先に おいて守秘対象とされる事項は一切含まれておりません。 ■メールマガジン(配信誌)のお申込み・解除は、以下のペ ージでどうぞ http://www.f5.dion.ne.jp/~t-izumi/mailmag.htm ------------------------------------------------------ このメールマガジンは、インターネットの本屋さん『まぐま ぐ』を利用して発行しています。 http://www.mag2.com/ (マガジンID: 0000063858) ------------------------------------------------------