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□■まぶちすみおの「不易塾」日記□■13年3月28日第1733号□■成年被後見人、「違憲」判決

□■まぶちすみおの「不易塾」日記□■13年3月28日第1733号□■成年被後見人、「違憲」判決

■□     まぶちすみおの「不易塾」日記     □■
□■2013年(平成25年)3月28日 第1733号■□
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□■成年被後見人、「違憲」判決

 14日、成年後見人が付くと選挙権を失うとした公職選挙法の
規定について、違憲無効とする判決が東京地裁で出された。
そして昨日、政府はこれに対して、東京高裁に控訴した。
一方、民主党内でも法務・総務部門を中心に議論が行われてい
る。

 選挙制度は民主主義の根底を支える重要な憲法上の権利であ
り、その制限は、必要最小限度の真にやむをえない場合に限定
されている必要がある。今回の判決は、本来、成年後見制度の
利用基準が、自己の財産を管理・処分する能力の有無という財
産管理上のものであり、それは選挙権を行使する能力とは異な
るという点を指摘し、「被後見人とされた人が総じて選挙権を
行使するに足る能力を欠くわけではないのは明らか」と判断し
ている。

 近年、欧米諸国では精神疾患などで判断能力が不十分である
ことを理由とした選挙権の制限は見直される傾向にある。オー
ストラリアでは、1987年に成年被後見人の選挙権制限規定を憲
法裁判所が違憲と判断し、翌年に制限を撤廃。スウェーデン、
カナダでも、それぞれ1989年、1993年に精神疾患を理由とした
選挙権制限が廃止された。これらの潮流を受け、国連は、2006
年に採択した「障害者権利条約」において障害者の政治的権利
を保障し、選挙権の確保を明記。これを踏まえ、イギリス、オ
ランダは、2006年、2008年にそれぞれ法改正、憲法改正により
制限を廃止している。

 一方、フランスにおける2007年の法改正のように、被後見人
の選挙権を一律に奪うのではなく、裁判官が個別に審査して選
挙権行使の可否を判断する仕組みも存在しており、スペイン、
デンマーク、アメリカの多数の州も、選挙権制限について裁判
所の審査を経る形を採用している。

 成年後見人が付いている人は、昨年末時点で約13万6400人で
あり、社会の高齢化が進むにつれて、今後も増えて行く見通し
だ。そして、今日までに行政府と立法府は、真剣に取り組んで
きたとは言い難い。高齢化社会における選挙権行使及び選挙制
度のあり方の問題について真摯に向き合い、必要な法改正を検
討する必要があるのだ。

 2000年に導入された成年後見制度は、判断能力に欠ける障害
者や高齢者の権利保護を目的とし、それまでの家制度に基づく
禁治産制度が、家の財産の流出防止のため判断能力のない人に
財産を管理させないことを主眼としていたことから大きな方向
転換を図ったもの。高齢者、障害者の自己決定の尊重と残った
能力の活用、障害者も通常の生活を送れるような社会をつくる
「ノーマライゼーション」の理念に基づき成年後見制度が設け
られた経緯を踏まえれば、後見人が付されたという事情のみに
基づいて機械的に能力がある人からも選挙権を奪うことは成年
後見制度の趣旨に反すると考えられる。

 「能力がないから権利を制限する」という考え方ではなく、
高齢者や障害者の権利を確保するため、「意思決定をいかに支
援するか」という観点で制度設計を考えるべきだ。不正投票の
防止策等、論点は多くあるが、民主党が目指す「共生社会」実
現の方向性からすれば、諸外国の例も参考にしつつ制度改善の
検討を急ぐべきだ。
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