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【出たっきり邦人 欧州編】1193 イギリス

【出たっきり邦人 欧州編】1193 イギリス

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■□■□■   出たっきり邦人・欧州編・2013・6・25・1193   ■□■□■
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              ◇◆乙編◇◆
        
            〓イギリス・ケント発〓

            『万華鏡』 第104回 

         <カリブ海との対話 - 人間万事塞翁が馬>

縁があるとは思ったことがなかったカリブ海でスキューバダイビングする機会
に恵まれました。国はメキシコ、場所はユカタン半島東海岸、リヴィエラ・マ
ヤことプラヤ・デル・カルメン。所属するローカルのダイブ・クラブのイギリ
ス人仲間たちとカリブ海及び内陸の鍾乳洞でのダイビングを思いっきり楽しん
できたのでした。

カリブ海の水温は27度、イギリス人にとっては天国です。透明度も非常に素
晴らしく、実にたくさんの魚や他の海洋動物と出会い、美しい地球の大自然の
一部を思う存分満喫してきました。

2年半前にイギリスでオープンウォーター・ダイバーの資格を取ってからとい
うもの、スキューバダイビングは私の新しい趣味になっています。しかし、や
はり涼しいイギリスの淡水湖だけでは物足りなく、海へ出かけないことには、
本当のスキューバダイビングは楽しめません。

透き通るような青、光り輝く白い砂、灼熱の太陽、青々としたヤシの木、気候
温暖な場所は常に故郷の神戸を思い出させてくれます。昔から海は特別な存在
であった私にとって、海に接するだけで嬉しいのですが、その海の中の世界を
覗き、ゆっくり鑑賞する貴重な機会をスキューバダイビングは提供してくれま
す。

プラヤ・デル・カルメンでは小型のボートに乗って沖に出、メキシコ人ガイド
を含む13人のダイバーたちが掛け声と同時に一斉にボートから後ろ向きに倒
れて入水しました。空から見ると面白い光景ではないかと思います。しかし、
初回のダイビングでは、ほとんどのイギリス人はなかなか海中へ下降できませ
んでした。メキシコ人ガイドさんが私たちを引きずり下ろしてくれたから、何
とか海底へたどりつき、水中での浮遊を楽しむことができましたが、これは北
米とイギリスの使用重量の単位が異なること、そして北米では軽めのアルミニ
ウムのタンクを使う事実が、イギリス人の通常のウェイト(重り)では不十分
であることを物語っていたのでした。

2回目のダイビング以降はウェイトを増やしたことで、とても快適なダイビン
グを楽しむことができました。文化の違いは色々ありますが、その違いを楽し
むのが海外でのホリデーですね。できるだけスペイン語を話すように心がけ、
地元の方々に喜んでもらえました。メキシコ料理にあまり関心がなかったもの
が、今ではお気に入りになりました。メキシカン・ソース類はイギリスで簡単
に手に入るので、色々試しています。異文化をたんのうする、この年になって
もそれを楽しめるというのはありがたいです。

プラヤ・デル・カルメンの向かえにはコズメルという島があります。そこでの
ダイビングも満喫しました。フェリーに乗ってコズメルに着くと、そこのダイ
ビングセンターのガイドさんたちが私たちを待っていてくれました。ダイビン
グ専用の素晴らしい大型ボートに乗り込み、風を切るように走るボートの中で
器材の準備をし、船首に座ってただただどこまでも青いカリブ海を眺めていま
した。

カリブ海でなくても、きれいな海洋世界をたんのうできる場所は他にいくらで
もありますが、内陸の鍾乳洞でのダイビングはメキシコならではのものでした。

何でも世界最良10箇所のダイビングスポットのひとつだそうですが、大昔は
海の中にあった地下川で、氷河期に川の一部から水がなくなり、永いときをか
けて地上の雨が石灰石に浸透して鍾乳石のつららと石筍が形成されました。そ
して再び水に満たされ、今日ダイバーたちはその地下水と海水の両方で埋まっ
た美しい鍾乳洞を鑑賞することができています。

イギリスにも鍾乳洞があり、私も何度か訪れました。もちろん山口県の秋芳洞
も訪れたことがあります。灯りがないと何も見えない洞窟の世界。暗闇の中に
光を差すことで、光の当たらない世界の美しさを引き出す。そこには何億年も
かかって出来上がった地球の美が隠されているのです。そのメキシコ版を非常
に清浄な水の中でたんのうすることができ、とても幸せに感じたし、ユカタン
半島に居住していたマヤ族がこれら洞窟の清浄な水を神聖化していた気持ちも
よく分かるようでした。

6日間のダイビング三昧の後、ツーリストになって、マヤ文明及びトルテック
文明の遺跡を訪れました。2007年7月に選定された新・世界七不思議の一つ
であるチチェンイッツァ・ピラミッド、そしてトゥルーム及びコバという遺跡
を訪れ、ガイドさんから多くのことを学びました。

これらツアーにはセノーテ(陥没穴)でのスイミングも含まれ、非常に澄んだ
淡水でのスイミングを楽しみました。マヤ人家庭を訪問したり、美しいビーチ
でリラックスしたり、メキシコ料理を食べながら伝統舞踊をたんのうしたり、
メキシコ文化に直に触れる機会を与えてくれました。

遺跡では過去に思いを馳せ、セノーテでは大自然の芸術の美に感嘆し、一般の
メキシコ人に接することで、今までメキシコに対して持っていた先入観も一掃
されました。最も、メキシコの警察と嫌な思いをしたイギリス人仲間もいまし
たが、上層部の腐敗はどの国でもあること、その現われ方は千差万別であるこ
とを再認識していました。誰もが懸命に生きている、決して豊かではない国の
国民も自分たちの生活のために頑張っている。この世では富者と貧者を切り離
せないし、幸運と不運も切り離せないですね。

また、イギリス人だけの団体に混じって生活するのも初めての体験で、キャラ
の違うイギリス人たちの言動を観察するのも面白いものでした。タバコを吸い、
入れ墨があり、ビールを大量に飲む肉体労働者階級の男性たち、それに対し、
タバコ嫌い、入れ墨なし、ワインを好むインテリ階級の男性たち、イギリス人
女性はおしゃべりな面は万国共通ですが、やはりお酒が好き、そしてファッシ
ョンとして入れ墨を入れたりしており、そんな色んなイギリス人と話すのも楽
しみました。

ダイビングというアクティビティがこれらキャラの違うイギリス人たち、そし
て私を結んでいました。事実、スキンヘッド、入れ墨たくさん、ビールとタバ
コはもちろん大好きなスコットランド人ダイバーは、「ダイビングがなければ、
あなたのような人と出会うことはなかっただろう」と別れ際に話してくれまし
た。私も、ダイビングがなかったら、今までとは違うタイプのイギリス人に接
することもなかったでしょう。

渡英した当時はかなりシャイでしたが、年齢を重ねながら海外生活を続けるう
ちにシャイな面は取れていきました。息子が同行しているとはいえ、主人を置
いて、イギリス人だけと文化の違う海外へ出かけた体験は、私にとって、大き
な成長を表します。数年前では考えられなかったことです。また、これからは、
息子がいなくても、イギリス人の中にすんなり入っていける自信もつきました。
人間は誰でも同じ。目の色や髪の色、価値観は違っても、何か共通するものは
必ずあるし、痛みや喜びを感じる心はまったく同じなのです。

お酒もタバコもやらない古風な日本人中年女性は、イギリス人たちの眼には異
様に映ったかもしれませんが、それでも彼らは私を受け入れてくれたし、私な
りに彼らの視点を変えさせることもできたのではないかと思っています。

本当にたくさんのことを学ばせてくれたダイビングホリデーでしたが、当初の
行き先はダイバーなら誰でも憧れる別の場所でした。しかし、料金が値上げさ
れたため、多くのイギリス人メンバーが脱退しました。そこで行き先が安めの
メキシコに変更になったのでした。私は非常に悲しみましたが、ここでキャン
セルしても仕方なく、本当にあまり気乗りせずにメキシコ行きを承諾しました。
しかし、色々調べるうちに、メキシコ行きが楽しみになってきたのでした。そ
して実際にメキシコを訪れ、素晴らしいダイビングを楽しんだ今、「人間万事
塞翁が馬」ということわざを身に染みて感じています。

メキシコには、今の私が学ばなければならないものがあったのです。カリブ海
に接するだけでなく、前から関心があったマヤ文明に触れることが、今の自分
に必要だったと悟っています。

来るものは拒まず、去るものは追わず。頭では分かっていても、いざ欲してい
たものが手に入らないと分かると、悲しくなるものです。しかし、それは縁が
ないことであり、その事実を受け入れなければならないのです。そして、縁が
あるものは、トントントンと物事が順調に進みます。自分の力ではなく、他力
に頼ることも大事なんだと、今回のメキシコ行きで思いました。

夢は持ち続けるが、コツコツと努力を重ねることが何よりも増して重要である
ことも再確認しました。やることはやって、後はお任せ。そのような生き方を
続けていきたいと思います。

プリマ

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◇◆次回は7月2日(火)フランス・パリ郊外から配信予定です◇◆
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