行政・政治・地域情報ニュース

行政・政治・地域情報ニュースのメルマガをWEBでご覧になれます。情報収集にどうぞ。

□■まぶちすみおの「不易塾」日記□■13年3月12日第1731号□■総裁候補ら3名の所信表明質疑

□■まぶちすみおの「不易塾」日記□■13年3月12日第1731号□■総裁候補ら3名の所信表明質疑

■□     まぶちすみおの「不易塾」日記     □■
□■2013年(平成25年)3月12日 第1731号■□
――――――――――――――――――――――――――――
□■総裁候補ら3名の所信表明質疑

 日本銀行総裁・副総裁候補の衆参議運委における所信表明に
対する参考人質疑が終わった。
これから、国会で議決が行われることになる。

 議決がなされる前に、この所信表明質疑について述べる。そ
して政権交代後の今日までの、日本銀行の行動についても述べ
ておきたい。

 民主党が政権を奪取した2009年は、すでに、リーマンショッ
クの後、世界金融危機の余波の中であった。民主党政権の3年3
ヶ月の間、日本銀行は、ゆっくりと小出しに金融緩和を実行し
た。米国英国が世界金融危機に際し、果敢に金融政策を実行し
たのに対し、非常に対称的である。日本銀行は、「デフレ脱却
議連」の日本銀行法改正の動きや昨年10月に前原大臣が政策決
定会合に乗り込むなど、日本銀行以外の「外野」が騒ぐと緩和
策を小出しにする。確かに、金融緩和の強化により、民主党政
権下では1年物から2年物、3年物の国債金利まで順次0.1%まで
下落した。民主党政権下の3年3ヶ月間をかけて、実に、ゆっく
りと、ゆっくりとであった。日本銀行は、物価の安定について
も、「理解」、「目途」と言葉の修飾を少しずつ変えながらも、
「インフレ目標ではない」としてきた。 

 しかし、昨年11月に衆院が解散となり、自公政権の誕生が確
定的になると、日本銀行は、態度を豹変させることになる。物
価の安定については、「目途」であり、「当面は1%」と言っ
ていたにもかかわらず、民主党が政権から野党に転じるとすぐ
に、「物価安定の目標」、「2%」と素早く安倍政権に従順の
意を示す。デフレ脱却議連で主張をしてきたことと同じ内容で
ありながら、政治が実際に動くだけで、日本銀行は行動を変え
たのである。
また、金利についても、安倍政権が誕生し、さらなる金融緩和
の期待が生じただけで、5年債までほぼ、0.1%の金利に近づい
てきた。民主党政権下で3年3ヶ月かけて行ってきたこと以上の
ことを、日本銀行は直ちに実施し、また、今後のさらなる緩和
をマーケットに対し期待を抱かせているのである。 

 2月7日、予算委員会の場で、前原議員が白川日本銀行総裁に
質問をする機会があった。なぜ、10月に動かなかったのに、わ
ずか3ヶ月後に素早く動くのか、日本銀行法改正を阻止するた
めに、動いたのではないかと質問した。すると白川総裁は、
「成長力、競争力強化に向けた取り組みが進められている」と
答弁している。民主党政権下でも、新成長戦略として、成長の
重要性を政策として打ち出したにもかかわらず、民主党の新成
長戦略ではだめで、自民党の成長力に向けた取り組みは評価す
るといっているのと同じである。

 要は、民主党政権は、与しやすいと思い、ゆっくり動き、不
穏な空気を感じ取ると、政策を小出しにする。一方で、自公政
権が誕生し、日本銀行法の改正を主張する安倍議員が総理にな
ると、態度を一変させて、従順の意を示す。民主党の新成長戦
略は無視し、自公政権の成長戦略は評価し、民主党政権下で散
々否定したインフレ目標を導入する。
つまり、日本銀行は、極めて政治的に動く集団なのである。 
 株価が上がると、政権の支持率もアップする。これは、今回
の安倍政権のときだけではなく、過去も、小渕政権で株価アッ
プと同時に、内閣支持率がアップしてきた。民主党政権下で3
年3ヶ月かけてゆっくりと実行してきた金融緩和を、もし、米
国や英国のように、素早く、大胆に実行していたら、おそらく、
株価は上昇し、円高も阻止できたであろう。民主党政権は株価
を味方につけることができなかった。まさにこれは、日本銀行
のゆっくりゆっくり動くという「政治的な動き」が一つの大き
な要因ではないか。 

 黒田総裁候補、岩田・中曽副総裁候補に対する衆参議運委で
の参考人質疑が3月4日から行われた。「日本銀行法改正が必要」
と答弁する岩田副総裁候補に対し、日銀の独立性を確保するた
めとの理由から問題があるのではないかとのニュアンスが質疑
の中でも垣間見られた。しかし、日本銀行はむしろ独立性をよ
すがとして、極めて政治的な動きで民主党の政策には×をつけ、
自公政権の政策に〇をつけ、そして、株価上昇による内閣支持
率アップを安倍政権に与えているのである。前原議員が大臣の
ときには、物価安定の目標は導入せず、3ヶ月後に安倍政権が
誕生するとすぐに、物価安定の目標を宣言した。
果たして、これを独立性と呼んでよいのか。
 見方を変えれば、岩田副総裁候補は、まさに民主党政権時代、
独立性のもとに日本銀行が政治的に動いていることを喝破し、
日銀法改正を主張しているのである。

 デフレ脱却による長期金利上昇の懸念については、昨年の5
月17日の社会保障と税の一体改革特別委員会質疑において前原
議員が「金利1%が上がれば、国債の評価損が生まれ、3.5兆円
の評価損が生まれる。地銀、第二地銀等では2.8兆円の評価損
が生まれる。」と日銀試算を基に指摘した。そして今回の参考
人質疑でも質疑者からこの試算指摘が行われ、金融システム不
安の可能性を指摘されている。しかし、これは、日本銀行試算
によるもので、銀行が保有する債券に着目した議論であり、銀
行であれば融資資産などを無視した議論であると言わざるを得
ない。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/32907

 また、出口戦略についても、岩田副総裁候補は「出口戦略を
するためには、国債をまず売りオペをするというよりも、日銀
当座預金の付利を引き上げていて銀行の信用創造を少し抑える
というのが最初の常道だというふうに思っています」と述べて
いる。付利の引上げは、金融引き締めと同様の効果を持つ。付
利の引上げとは、まず、現在、超過準備として銀行や証券会社、
短資会社が日本銀行に預けている預金に対し、0.1%の金利を
付利しているが、これは、実質的に0.1%で売りオペをしてい
る効果を持つ。岩田副総裁候補の主張は、経済が過熱してきた
際に、付利の金利を引き上げることにより、日本銀行は持って
いる国債などの証券を実際には売らずに、バランスシートを急
速に変化させることなく金融引き締めが可能だというものであ
る。出口戦略重視派は、大抵、日本銀行が国債を売らざるをえ
なくなることを主張していることから、岩田候補は、そのよう
な答弁をされていると思われる。これは、米国大恐慌の回復期
にも行われた方法である。むしろ当時の米国では、準備率の引
上げという形で急激にやり過ぎて景気後退となってしまった。
一方、黒田総裁候補は、同様の質問に対し、「出口戦略との関
係でいいますと、そのとおりでありまして、御承知のように、
FRBなども出口戦略についての議論はしているわけです。ただ、
バーナンキ議長自身、まだ出口をどうこうするときではないと
おっしゃって、緩和を続けるということであります。」と、議
論はするが、対外的に打ち出すには時期尚早としている。
 しかし気をつけるべきは、一方で当初から出口戦略を考えて
金融緩和を行ったのが日本銀行であり、それ故、残存期間が短
い国債購入を行って、いつでもバランスシートを縮小しやすい
ようにしてきた。出口を意識すると、効果が出なくなることも
注意しなければならない。

 このように、参考人質疑だけではまだまだ不十分ではあると
思うが、中央銀行の政策運営に関しての候補者の主張がよく示
されていたと思っている。
              □□  □■  ■□  ■■
――――――――――――――――――――――――――――
□■編集・発行:まぶちすみお
□■解除:http://www.mag2.com/(マガジンID:0000058393)
□■ホームページ: http://www.mabuti.net/
□■ご意見・お問い合わせ: office@mabuti.net
□■ツイッター:@mabuchi_sumio