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【出たっきり邦人 欧州編】1166 イギリス

【出たっきり邦人 欧州編】1166 イギリス

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■□■□■   出たっきり邦人・欧州編・2013・2・19・1166   ■□■□■
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              ◇◆乙編◇◆
        
            〓イギリス・ケント発〓

            『万華鏡』 第101回 

             <400年の絆>

今年、日本とイギリスが正式に通商を始めてから400周年を迎えます。
時は1613年の夏、イギリスの東インド会社の帆船クローヴ号が九州の平戸に
到着し、将軍徳川秀忠、そして大御所徳川家康より朱印状が出され、日本国土
での交易が正式に許可されました。その時から日本とイギリスの外交、通商、
科学、そして文化の交流が始まったのでした。

東インド会社 - 学校の世界史授業でしっかり学びましたね。七つの海を
制覇していった大英帝国。今日の貿易は、東インド会社なしでは発展達成し
えなかったと言われます。一時は世界最大の商船群を擁し、世界の半分の
貿易を取り扱っていた東インド会社。規模はずっと小さくなったとはいえ、
現在でも会社は健在で、ロンドンのメイフェア地区に店舗を構え、紅茶、
ビスケット、チョコレートなどなど、昔からイギリス人が好んだ世界の産品
で作られた嗜好品をイギリスで販売し続けています。

東インド会社は1600年に創立され、初代の総裁にビジネス力に長けたトーマ
ス・スマイズ卿という人が就任しました。彼のお墓はケントにあり、イギリス
でも有数な立派なお墓だとされています。私も接待の仕事で訪れたことがあり
ますが、ウェストミンスター寺院内で見るような有名人のお墓同様、石で作ら
れた本当に立派なものでした。それだけ彼はイギリスが誇る偉業を遺したこと
でしょう。かなりの資産を残し、チャリティも設立したとのことです。

その世界に名を轟かせた東インド会社を支えていたのは冒険心旺盛、開拓精神
に溢れた社員たちでした。海外に出て新しい商品を探し、新しい販路を開拓し
ていっただけでなく、現地でコーディネートし、人々に海外の物品を紹介して
いきました。まさに今日の貿易の基礎を築いていったのでした。過去があって
の現在ですね。

クローヴ号の艦長ジョン・サリスも冒険心においては例外ではなく、当時の君
主、ジェームズ1世からの書簡と徳川幕府への贈呈品である科学器材やイギリ
スの織物を載せて日本に向かったのでした。贈呈品のひとつは望遠鏡であり、
恐らくアジアに到着した最初のものと思われています。

世界あちこちを航海する船といい、望遠鏡のような科学器材といい、江戸時代
の人々の驚愕も相当なものではなかっただろうかと想像します。徳川幕府とい
えば鎖国というイメージばかりが伴っていましたが、鎖国をしたのは家康の孫、
第三代将軍家光でしたね。家康はむしろ世界を知りたがった。日本だけが世界
ではなく、日本は世界の一部であることを認識し、外国人から学ぼうという姿
勢があったように思われます。もちろん一線を越えてはならないというスタン
スは保持し、宗教及び貿易の取り締まりはしっかりとしていた。イギリスがそ
んな日本との通商に漕ぎつけられるようになったのも、その過程で一番活躍した、
日本の土を最初に踏んだイギリス人、ウィリアム・アダムズのおかげでした。

旗本として家康に仕えた三浦按針ことウィリアム・アダムズについては、過去
のエッセイでも何度も言及しました。彼は私の住む地区で生まれ育っただけで
なく、彼が洗礼を受けた教会で私の主人も洗礼を受けたという深い縁がありま
す。イギリス人のほとんどはウィリアム・アダムズについては知らないもので
すが、私にとって彼は非常に特別な人であるので、私なりにアダムズの名を広
める宣伝をしています。家康から厚い信任を受け、日本とイギリス間の絆を構
築していった張本人。

私にとってアダムズは特別のように、日本は自分にとって特別と思うイギリス
人も多く、そんな人たちが中心となって、「J400」(Japan 400)と呼ばれるプロ
ジェクトが立ち上げられました。日本とイギリスの交流開始を記念し、様々な
イベントが企画されているプロジェクトです。

その皮切りとして、去る1月31日に、ロンドンのサドラーズウェルズ劇場で
日英合作舞台『Anjin: The Shogun and The English Samurai(邦題:
家康と按針)』が上演されました。1月31日はなんでも、グレゴリオ暦では
家康のお誕生日だそうです。家康の470歳のお誕生日にJ400プロジェクト
は始まり、クローヴ号が様々な日本商品を積んでイギリスに戻り、最初のオー
クションがかけられた記念日、12月20日まで続きます。

イベントは講演会、美術展、各種展示、扇子デザインコンクール、日本祭りな
どのほか、地元メッドウェイでは恒例の「ウィリアム・アダムズ・フェスティ
バル」が開催されるし、正式な日英通商開始の記念日である10月2日に大英
博物館で春画の展示も催されます。

17世紀のイギリス人にとって、とにかく日本とはすべてが未知でした。クロ
ーヴ号の艦長は日本から個人的なプレゼントとして春画を受け取ったのですが、
東インド会社によって没収廃棄されました。

春画をまじめに研究する女性の大学講師の講演会に参加する僥倖に恵まれたこ
とがありますが、日本人は性について大らかであったことが外国人の印象に残
ったことを話されていました。当時の絵師は誰でも春画を描いていたとも。
17世紀のイギリス人は春画を通して日本をどう見たか、そんな観点を考察す
るためにも、大英博物館での展示を楽しみにしているのです。

また、ケント内の博物館では、平戸からの色んな物品が展示される予定で、そ
んな千金の値打ちのある実物に接する機会も楽しみにしています。そしてもち
ろん地元でのウィリアム・アダムズ・フェスティバル。

今年は日英交流の歴史を振り返る機会が多くなりそうですが、それだけ、日本
とイギリスの交流は深いし、その始まりはウィリアム・アダムズの関わりにあ
るという事実を再認識しています。交通手段は船しかなく、往来に何ヶ月や何
年もかかった当時、瞬時にして情報が地球の裏側に届く現代からではその大変
さは想像しにくいですが、現在色んな利便性を私たちが享受できるのも、多く
の先人たちのお陰ですね。

400年前に始まった日英の交易。途中で断絶することもありましたが、現代は
勢いを取り戻し、両国間の通商及び文化交流は留まることを知らないようです。
イギリスに永住する日本人として、引き続き良質な橋渡し役でいられるよう、
努力を重ねていきたいと思います。

次回は上述の日英合作舞台『家康と按針』を鑑賞した感想を書きたいと思います。

プリマ

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◇◆次回は2月26日(火)フランス・パリ郊外から配信予定です◇◆
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